お墓の基礎知識Elementary Knowledge
お墓や法要等についての説明・解説と、霊園や寺院墓地・墓石についての知識、また一般常識や法要のマナーなど知っておきたい情報を掲載しておりますので、是非ご活用ください。
8.彫刻文字について
お墓に刻む文字は家名や信仰する宗教の題目、また自分の好きな言葉などいろいろあります。
彫刻文字の内容を決める
墓石に彫刻する事柄として、和型石碑の場合は「正面文字」「建立者名」「埋葬者名等」「家紋」の4つが一般的です。
正面文字※クリックすると詳細へ移動します。
墓地や霊園では「○○家之墓」と刻んでいるお墓をよく目にしますが、宗旨や宗教によって刻む文字は違ってきます。例えば、浄土宗・浄土真宗では「南無阿弥陀佛」、日蓮宗では「南無妙法蓮華経」と刻むことがよくあります。
また、神道の場合は「○○家之奥津城(おくつき)」(「○○家之奥城」、「○○家之奥都城」)と彫刻します。
寺院境内墓地の場合には「南無阿弥陀佛」や逆に「○○家之墓」等、正面文字が決まっている場合も少なくありませんので、事前に確認しておく必要があります。
なお、関西では正面文字は色を入れずに彫ったままの状態で置くのが一般的です。(九州地方では金箔などで金色を入れたりします。)
建立者名
建立者名の彫刻位置は特に決まっているわけではありませんが、建立者名と建立年月は、棹石の左面か裏面に刻まれている場合が多く見られますが、吉相墓などは上台の左面に彫刻します。
また建立者として刻むのは、故人の配偶者か後継ぎのどちらかか、両方の連名が多いですが(生前墓の場合は夫婦連名も多い)、最近は「お金を出した人」ということで、家族全員の連名の場合や「故人のお金で建てたので」ということで、故人の名前にするケースもあります。また、生きている人の名前をお墓に刻む場合は、名前部分に朱色を入れて故人と区別するのが一般的です。
※なお、お墓に刻む「建立者」と墓地の名義人とは、必ずしも一致させる必要はありません。
埋葬者名
仏式の場合は、最近では「戒名(法名・法号)」・「命日」・「俗名(生前の名前)」・「行年(享年)」の4点を彫刻するのが一般的です。(位牌の内容と同じです)
神式の場合は 生前の名前に「おくりな」をつけるのが正式のようですが、名前そのままの場合も多く、その他没年月日・年齢を刻みます。
キリスト教の場合は、名前+ホーリーネーム・誕生日・没年月日(西暦)、年齢の3点が一般的です。
なお、数十年前までは、彫刻の料金が「一文字単位」で計算されていたことから、戒名のみや名前のみで済ませている場合も少なくありません。また、まったく埋葬者名を刻まない家もあります。
ちなみに表題では「埋葬者」としていますが、必ずしも納骨されている方だけしか刻めないわけではなく、お骨がなくて彫刻しても一向に構いません。(戦死された英霊様など、お骨がない場合もあります。)
■名前を刻む順番
和型墓石の場合、埋葬者名は右側面と裏面に彫刻する場合が多く、たいてい1面4人〜5人分、2面で合計8人〜10人分のお名前を彫刻するのが一般的です。
※墓所の広さに余裕がある場合は「霊標(墓誌)
」を置き、それに彫刻されると、神聖とされる「仏石(棹石)」に傷をつけずに済み、両面で12人〜20人分刻めます。
また彫刻する順番については、和型墓石の場合、正面向かって右側が上座とされていることから、古い順に右面の右端から刻むのが多いです。その際、亡くなった順に刻む場合と、夫・妻、夫・妻と夫婦(世代)順に刻むやり方がありますが、最近では亡くなった順のほうが多いようです。
■戒名(法名)を刻む際の注意
仏式の場合は、位牌か過去帳に記載されている文字そのままに、特に戒名は旧字体で書かれているものは旧字体のままで彫刻するべきものですので、間違いのないように注意してください。できれば、石材店の担当者に位牌か過去帳を直接見てもらうか画像を渡すかして、なるべく書き写さないようにしたほうが無難です。(もしも間違えた文字を渡して気付かずに間違ったまま彫刻してしまうと、自己負担で修復しなければならなくなります)
また戒名(法名・法号)については、できれば石材店の担当者から彫刻原稿の縮小コピーをもらって、お寺様にも見て確認して頂く方がいいでしょう。(特に寺院境内墓地(檀家用)の場合)
家紋※クリックすると詳細へ移動します。
昭和のころまでは結構家紋を伝えるものがたくさんありましたが、近年は紋付の着物等をつくることも少ないようで、お墓が唯一の家紋を伝える手段となっている家も多いようです。
また、家紋を彫刻するにあたり、施主様へ家紋を確認すると、伝え聞いている家紋の名前と、紋付の着物に染められている紋と違っていたり、紋付の紋が実家のお墓に刻まれている紋と違っていたりといったケースも結構ありますので、実家に帰られたときなどに、実家の墓石や紋付の着物など、一度よく確認しておくほうがいいかと思われます。またできれば携帯電話のカメラ機能やデジタルカメラで写真に残しておけば、彫刻原稿を作成する際の説明の手間が省け、また間違いも起きにくいと思われます。
彫刻文字の書体※クリックすると詳細へ移動します。
お墓に刻む文字の字体としては、「楷書体」が約90%、「行書体」が約5%、あとは「隷書体」や「草書体」、その他といった割合となります。
なお、楷書体については、関西ではシャープな感じの標準的な楷書がほとんどですが、中には肉厚ですこしクセがあり重量感がある「四国楷書」といわれる字体もみられます。
平成の始めの頃までは、書家の先生が手書きで書いていましたが、近年ではパソコンの墓石文字ソフトで原稿を作成することがほとんどです。手書きの場合は、先生も得意な字と苦手な字があったりして若干ばらつきがありましたが、パソコンソフトは一応は均整のとれた文字が多く、なかには文字の形・太さなどを微調整できるソフトもあり、より細かな要望にもスピーディに対応できるようになりました。
彫刻文字の色
正面文字の所でも出ましたが、和型墓石の場合、関西では、正面文字には色を入れずに彫ったままにするのが一般的です。また、埋葬者と建立者・建立年月、家紋については、見やすくするために黒や紺、白といった色を入れることが近年多くなり、半数程度の方が色を入れています。
色入れについては、1色で統一するのが普通で、人気としては黒が大半を占め、そのあと紺、白はごくわずかといった感じになります。(黒の石碑は白が多い。)さらに大抵は建立者が該当しますが、近年では生きている人の名前をお墓に刻む場合は、名前部分に朱色を入れて故人と区別するのが一般的です。
なお朱色を入れた人が亡くなった場合は、朱色を抜くか上から黒色などで塗りつぶすのが普通ですが、色を完全に抜くのは大変難しいため(若干色が残ってしまいます)、ほとんどの場合、黒色で上塗りします。
石材によっては特に色を入れないと文字やデザインが見えにくい場合がありますので、色を入れる事によってはっきりと文字を見せることができます。又、黒系の石は色を入れなくてもはっきりと文字が見えるので、色を入れる事により石の特長が消されてしまう事があります。色を入れた場合、最初は綺麗ですが時間が経つと汚れが目立ち、塗料がはがれて汚くなるという欠点もあります。